葬儀は見送る家族にとっても生涯数度の大仕事。
ですが、「死後の手続き」の本番はむしろ、葬儀後です。
いつまでに、何をやるべきか。知らないと損する「もらえるお金」も含め、まとめました。
人が亡くなると、お金はいくらかかるのでしょうか。一概に示すのは難しいところです。
お墓の有無、供養に対する考え方、相続する資産などによって、大きく異なるからです。
それでも、ほとんどの人にとって、死後すぐに支出される大きなお金があります。
それが、葬儀費用です。
「SBIいきいき少額短期保険」が2020年8月、契約者を対象に実施した「お葬式に関するアンケート」(有効回答数2537人)で、葬儀費用の総額について尋ねました。
経験した「家族の葬儀」のときよりも、将来の「自分の葬儀」では「費用を低く抑えたい」という傾向が顕著にみられました。また、回答者の約9割は50代以上でした。
家族の葬儀費用について、自身や配偶者が喪主として葬儀を執り行った経験者の74.2%が「200万円以下」と回答しました。このうち半数以上が100万円を上回りました。従来の一般葬を営んだ人が多かったとみられます。
これに対して、自身の葬儀で希望や関心のあるものとして、「家族葬のような親しい人のみの小規模な葬儀」と回答した人が、65.1%(複数回答、以下同)と最も多く、「一般的な葬儀」(8.8%)、「直葬」(8.4%)を圧倒的に引き離していました。同社では「新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響もありそうだ」とみています。近年の「葬儀の簡素化」の傾向が、コロナ禍でさらに高まっているようです。
自身の葬儀費用では、「100万円以下」が65.3%と約3分の2を占めました。「子供に負担をかけたくない」などの理由で、費用を抑えたいという傾向がうかがえる結果となりました。
〜 葬祭費・埋葬料 〜
葬送の費用を補助する制度が「葬祭費」「埋葬料」です。
国民健康保険または後期高齢者医療保険の加入者が亡くなったとき、支給されるのが「葬祭費」。支給額は市区町村で異なります。
東京都の23区は7万円ですが、全国的には3万円程度の自治体も多いのです。
申請には印鑑、健康保険証、葬儀社発行の内訳がわかる領収書(または会葬礼状)、葬儀を行った人の金融機関の口座番号が必要です。
ファイナンシャルプランナーの野口悟さんは「死亡診断書の写しなどが必要な自治体もあります。居住する市区町村の窓口に問い合わせることが大切です」と言っています。
一方、全国健康保険協会の「協会けんぽ」や会社の健康保険組合などの加入者が亡くなった際に支払われるのが「埋葬料」です。一律5万円で、申請には、住民票、領収書の原本、死亡診断書、埋葬許可証のコピーなどが必要になります。
葬祭費と埋葬料、どちらも親族以外の人が葬儀を行っても申請できます。ただし、埋葬料は亡くなった加入者に扶養家族がいない場合に、5万円の範囲内で実費を申請します。
〜 高額療養費 〜
1カ月間に窓口で払った医療費が、「自己負担限度額」を超えた場合、請求で払い戻されるのが「高額療養費制度」です。自己負担限度額は「70歳未満」「70歳以上」の2区分に加え、所得で細かく設定されています。
亡くなった後、遺族が請求できます。ですが、意外に多いのが「外来」で支払った医療費の申請漏れなのだそう。制度が複雑でそのままにしてしまうことも多いようです。
野口さんは「70歳以上に設けられた”外来区分”で、申請を忘れるケースが目立ちます」と話します。一般所得者の場合、1カ月間の負担上限額は入院、外来を含めて4万4000円ですが、通院だけだと、外来区分の1万8000円を超えた分が、払い戻しの対象となります。
例えば、2つの病院に通い、それぞれ1万円ずつ診療代や薬代などの自己負担があれば、合算で2万円になり、負担上限額を上回る2000円が払い戻しの対象となります。これを見逃す人が多いのだそう。請求できる2年前までさかのぼれば、4万8000円になる計算です。
医療機関や薬局の領収書が残っていれば、故人が加入していた健康保険の窓口に確認したほうがいいでしょう。
〜 未支給年金 〜
年金は2カ月分を偶数月に受け取る仕組み。死後最初の偶数月に受給が停止されます。
ただし、亡くなった月分までが支給対象です。このため、受給停止で最大2か月分が「未支給」になりますが、遺族は請求によって受け取ることができます。
「遺族年金の申請手続きをする際、窓口で教えてくれるはずですが、申請しないと受給できません。窓口で説明を受けても自動的に振り込まれることはありません」と野口さん。日本年金機構も遺族に案内を郵送しているといいます。
また、未支給年金は受け取った人の「一時所得」に該当する場合があります。受け取る年分に、一時所得の合計額が50万円以上になると、確定申告が必要です。
※ 本記事は、産経新聞出版発行「終活読本 ソナエ」に掲載された記事を再編したものです。